このままじゃ駄目だって思ってるけど。
でもどうしたら良いんか、全然分かんねぇ。
















○●会えない
















が倒れて二週間が経った。
俺はあの日から、病院に行っていない。




怖かった、から。
怖い、から。
弱っていくだけの を見ていく勇気がない、から。




が倒れた次の日に、 のお母さんから俺に電話があった。
俺が に渡した電話番号の紙を見てかけてきたそうだ。
は集中治療室に入ってるけど、発作は治ったって。
あの時俺がいなかったら本当にどうなっていたか分からなかったって。
そういう話。
俺は「はい」とか「そうですか」ぐらいしか返せなかったけど。
それから3日後、また のお母さんから電話があった。
集中治療室から出ることが出来たって。
本当はこういうこと、家族でもない俺が聞いて良いんじゃないんだけどな。
のお母さんの配慮だ。




に会いたい。
  会うのが怖い。



















今はテスト期間中。
ていうかテスト初日。
部活はミーティングのみ。
真田がまだ来てないから始まってないけど。



「丸井先輩最近元気無いッスねー。」
「丸井が座っとる席だけ空気が重いのぉ。」



このままじゃ駄目だって、分かってる。
分かってるけどさ・・・・。







机に突っ伏して、顔を横に傾ける。
俺の横にジャッカルが座った。


「元気ないな。」
「んー・・・。」


曖昧な返事をしてジャッカルを見上げる。
ジャッカルと目が合うと、心底あり得ない物を見た、って感じの顔をされた。




「・・・何だよ。」
「お前、ガムはどうした?」
「あー・・・、そういや食べんの忘れてた。」
「忘れてたって、マジかよ・・・。」



ガムを食べるっていう習慣さえ忘れてた。
ガム・・・・あぁ、そういえば最後に食べたのいつだっけ・・・?








「丸井も末期じゃのぅ。」
「ガム食べるの忘れてたって、相当ッスね。」
「悪かったなー相当でー。つーか誰かガム持ってねぇ?」
「あるぞ。」
「お、マジで?」



赤也あたりが持ってねーかなと思ったら、以外な事に持ってたのは蓮二だった。



「さんきゅ・・・って、ちょい待て。」
「何だ?」
「何だじゃないし!何その色!?何そのグロテスクな物体!?蓮二俺に何食わす気!?」
「あぁ、昨日貞治からもらった物でな。『乾汁スーパーデラックススペシャルバージョン』を食べやすくガムにしたそうだ。」
「いやどう見たって食べやすくじゃねぇだろぃ!?」
「元気が出るぞ。」
「寧ろ三途の川渡る気がする。」
「遠慮するな。折角貞治からもらったんだ。」
「赤也が食べろぃ!」
「何で俺ッスか!」


ギャアギャア騒いでる時に、入ってきた真田の鶴の一声で黙り込む俺たち。
でも俺も赤也も笑いこらえてる。



あぁ、そっか。
俺、笑ったの久しぶりなんだよな・・・・。








ミーティングが終わって、帰る途中に俺の携帯が鳴った。
ディスプレイに表示された文字は「非通知」。


のお母さんからだ。


なんとなくだけど、そう思った。
なんとなくだけど、胸の奥がざわりとした。



「もしもし?」
「丸井君!?あのっ・・・」



その言葉を聞いて、家に向かっていた足を方向転換させた。
のお母さんの言葉を最後まで聞いてる余裕もなかった。




が病院からいなくなったの!!』




どういう事だよ・・・!?













2006.12.14