医者でもない俺は の病気を治す事は出来ない。
じゃあ、俺が にしてやれることは・・・・?

















○●約束

















「幸村君!!」
「あ、ブン太こっち。」



待ち合わせ時間に少し遅れていた俺は走って幸村君の所へ行く。
久しぶりだ、幸村君の私服姿。
って言っても、もともと部活休みなんてほとんど無かったから部員全員の私服姿なんてここ最近見てねぇけど。




「ーーーーっはぁ。悪ぃ、メール気付かなかった・・・・。」

膝に手を置いて呼吸を整える。
駄目じゃん。また体力なくなってきたみたいだし。




「お疲れ。そんなに急がなくても良かったのに。」
「病み上がりの部長サマを外で待たせっぱなしって訳にはいかねぇだろぃ。」
「ふふ。お気遣いありがとう。じゃあ、行こうか。」
「って、何処に?」
「まぁ来れば分かるよ。」





にっこりと笑った幸村君。
珍しく腹黒笑顔じゃない。
と心の中で思ったら、「何か言った?」って、腹黒笑顔を返された。


ちょっと待て。
俺口に出してないだろぃ!?
心の中読むなって!!






















「写真部?」
「うん。」
「って、何で幸村君鍵持ってんの?しかもそれ学校にある鍵じゃねぇ・・・よな?」
「合い鍵って簡単に作れるよね。」





マジですか。





サラリと恐ろしい事を言ってのけた幸村君は写真部部室を開けて入っていく。
うん、決めた。金輪際俺は幸村君に鍵は貸さない。









ごく当たり前のように、さも自分の部活の部室のように幸村君は写真部のカメラを物色している。
俺はテニス部の部室しか入ったことないから落ち着かない。




・・・・コレは俺の行動が正しいんだよな?






「なぁ、カメラとか勝手に触るとマズイんじゃねぇ?」
「うん。だから責任はブン太ね。」
「はぁっ!?何だよソレ!!」
「はい、カメラ。」
「ちょっ、このカメラどうす・・・・「早くしないと置いていくよー」





写真部にあった使い捨てカメラを俺の手に乗せると、幸村君はさっさと部室から出てしまった。
手に乗っているカメラを元に戻そうとしたけど・・・。





俺の中の天秤が幸村君と写真部をかけた。











ゴメン写真部。
俺幸村君に逆らえない。













学校を出ると、また行き先を告げずに幸村君は歩き出した。
俺は冷や汗いっぱいだ。





「幸村君今度はどこ行くんだよ?」
「病院。」
「病院って・・・・?」



さんの所。」





その言葉を聞いて、俺の足はピタっと止まった。







「は・・・?」

の病院へ、カメラなんか持って行ってどうすると言うんだろう。





「写真をね、撮ろうと思って。」
「・・・・?」
「俺が退院するちょっと前に、 さんが俺の病室に来たんだ。その時に約束したんだよね。」













「幸村君とかブンちゃんとか、凄く楽しそう。良いな。学生の時の写真って宝物だよね。」
「じゃあ さんも撮ってあげるよ。」
「ホント?」
「うん。親に頼んでカメラ持ってきてもらうよ。」
「あっ、ソレは駄目!」
「どうして?」
「あのね、そのお願い、幸村君が退院したら叶えて。」

だから幸村君の病気が早く治りますように。
生きることを諦めないで。


俺が1番不安だった時に、 さんが言ってくれた言葉。
約束。











「へぇ・・・・。」


が、幸村君とそんな約束してたなんて。
写真だったら俺がいくらでも撮ってやるのに。

いや、そうじゃないか。
コレは なりの、幸村君を励まそうとした事だもんな。






「って、それじゃあ別に写真部からカメラ盗む事ないんじゃねぇの?」
「この辺にカメラ屋さんないだろ。それに写真部なら1日で現像してもらえる。」
「そんな他人のカメラ(元は写真部だけど)なんか現像してもらえるか?」
「そういうときの権力だよ。」





どういう権力だよ。







改めて幸村君の強さを知った俺だった。











2007.5.13