「丸井先輩、最近機嫌良いッスねー。」
「良いことでもあったんだろう。」
「ジャッカル知らんのか?」
「さぁ。特に何も聞いてないけど・・・。」



そんな会話をされてたなんて、知らなかったけど。




















○●何となく嫌で





















「よし!!今日の練習はここまで!!」
「「「っしたーーー!!」」」



今日の練習がやっと終わった。
昨日は に会ったんで、俺は1日中機嫌が良い。
ガムも普段より美味く感じるぜぃ。










部室で着替えていると、赤也と仁王が来た。



「丸井先パーイ♪今日は機嫌良いッスねー!」
「何があったんじゃ?」
「秘密ー。」
「えー!気になるんスけどー!」



ギャアギャア喚く後輩をスルーして、着替えを進める。
の事は絶対秘密なんだぜぃ。








「丸井、女でも出来たか。」


柳の言葉に、不覚にもピクっと反応してしまう。
それを見逃さないのが仁王。



「ほぅ。丸井も隅に置けんのぉ。」
「紹介してくださいよ!」
「ぜーったい嫌だ!」





プクッとガムを膨らませる。
そう言えば、 はガムの風船出来たのかな、なんて思いながら。














「お前達!!早く着替えんか!!」



正に鶴の一声。
俺にちょっかい出してた赤也も慌てて着替えだす。
ちゃっかり仁王は着替え終わってたけど。



「じゃーな♪」
「あ!ズルイッスよ!」
「ブン太、この間言っていたCDどうするんだ?」
「あ、それまた今度で良いや。」



逃げるが勝ち。
俺はさっさと着替えをすませると部室を出て行った。
本当は病院に行きたかったけど、時間が時間。平日は無理。
















「まったく。恋愛沙汰とはたるんどる!」
「まぁまぁ。どんな形でせよやる気になれば良いでしょう。」
「柳、丸井の彼女が誰か分からんのか?」
「調査は出来る。」
「俺知りたいッス!」
「って、それ犯罪じゃねぇのか・・・?」




俺のいない間に、こんな会話が成されていたなんてやっぱり知らなかったけど。





















◇◆




















休みの日の部活は好きだ。
前は平日より長くてしんどくて嫌だなーって思ってた事もあったけど。
時間が出来る=病院へ行ける。
けど俺は、重大な事を忘れていた。
大きなミスを犯しちまっていたんだ。
このときはまだ気付いてなかったけど。









今日はケーキを買って行くつもりだ。
俺の好きな苺タルト。
も甘いモン好きだって言ってたし。
この前幸村君の見舞いに行くとき寄ったケーキ屋さんでタルトを二つ買っていく。
病院へ行くのも大分慣れた。
毎週行ってたら慣れるよな。受付の看護婦さんにも顔を覚えられた位だしさ。
俺は受付を済ますと、2階へと上がる。
その時に何で気付かなかったんだろ、俺。
後ろからつけてきてた奴らに。







ー。入るぜぃ。」
「あ、ブンちゃん!」



今日の の顔色は良かった。それに元気そうだった。
この前の週は検査と被っちまって会えなかったから、結構久しぶりだ。
「今日はケーキ買ってきたぜぃ。」
「やったー!」




満面の笑顔の
俺と一緒。やっぱり甘いモンって良いよな。
それに、やっぱ好きな子の笑顔って特別可愛いく見えるモンだろぃ?









俺と がケーキを食べている時だ。
ガチャリとドアの開く音がする。
看護婦さんかな?っと思った俺が甘かった。
苺タルトより甘かった。




「失礼しまーす!」
「赤也!!お前ってヤツは!」
「二人とも静かにしろって。」



入ってきたのは、俺のチームメイト。テニス部Rメンバー。



「なっ、えっ・・・!?」
「悪いな。興味深いので後を付けさせてもらった。」
「悪いと思ってんなら来んなって!」



俺が の所へ通ってるって事を知ってんのは、そう。ただ一人。



「幸村君・・・。」
「ふふ、こんな楽しいこと黙って見てる訳ないじゃない。」



恨めしげに幸村君を見るけど、満面の笑みで返されてしまう。
いや、分かってたよ。うん。
幸村君が黙ってるわけないって。
脱力。














Rメンバーの中で、 は比呂士と話していた。
の専属医が比呂士の親父さんっていうのもあって会話が出来るんだろうな。
まぁ、たまには大勢と交流あってもいいかもしれないし。
そう自分を説得させながらガムを膨らます。
椅子にもたれ掛かって、ぼーっと の様子を見ていた。



「可愛いッスねー、丸井先輩の彼女。」
「丸井にはもったいないのぉ。」
「そうッスねー。」
「って、何勝手な事言ってんだよ!」



椅子に座った状態から足を伸ばして赤也に蹴りを入れる。
難なく交わされちまったけど。
それがまた腹立たしかった。



「つーか、彼女じゃ・・・。」



ない。と言おうとしてやめた。
そんな事したらこいつら絶対俺が と付き合おうかなーなんて言い出すに決まっているしな。
実は俺と は付き合っていない。正式に。
付き合ってないけど、何かもう今更どうこう言うのも変かなぁって思って。
まぁ、俺が一方的に好きなだけかもしれないんだけどさ。








の笑顔を人を元気にさせる。
少なくとも俺はそう思ってる。






まぁ、たまには大勢との交流も良いだろうけどさ。
でも が他の男と喋ってるの見たら・・・何か、嫌な感じ。
別に嫉妬とかそういうのんじゃないぜぃ?うん。
そんな事を思ってる間に赤也と仁王は に話し掛けに行くし。
あ、やっぱ嫉妬かも。







が疲れるだろぃ!全員出ろって!」







俺は椅子から立ち上がると仁王達を追い払っていく。
が疲れるっていうのは表向きな理由。ホントは が他の男と喋ってるの見たくなかったからなんだけどさ。
でも一応 の体も気遣ってるんだぜぃ?
、別に良いよーとか言ってるけど。
とりあえず追い出した。











一旦全員追い出した所で の所へ戻る。



「悪ぃな。騒がしかっただろぃ。」
「うぅん。楽しかったよ。みんな面白い人ばっかりなんだね!」




こうやって笑顔で言われたら、何も言い返せなくなる。
最終的には「またみんなで遊びに来てね!」なんて言われちまうし。











やっぱり、好きなのって俺の一方的?











2006.9.27