1日最低30分散歩。
少しでも体を動かさないと、どんどん悪くなっちゃうから。
今日は病院の中庭をぐるっと回ってきた。
やっぱり外は気持ちいいよね。



















○●グリーンアップル味




















帰ってきた時に見たのは、私の部屋の前に立っている二人の男の子。
少し眺めの髪の男の子は知っている。私と同じ階、逆の廊下突き当たりに入院している人だ。
名前は幸村君。年が近い子が他にいないから、結構よく話す。
それと、もう一人。赤い髪の毛の男の子。
初めて見る人。
どう見たって私に用があるように見える。
これより奥に部屋はないし、それに私の部屋の前にいるし。




何の用だろう?
とりあえず、声をかけてみた。











「何か用?」
「いえ・・・っあ!あぁ!!」



否定の言葉の後に続く、驚愕の声。
赤髪の男の子は何故か私の事を知っているみたいだった。
気付かないところで会ったことがあったのだろうか・・・。
記憶の糸を辿ってみても、彼らしい人を見た記憶がない。
あんな赤髪。他にはいないもの。











・・・ ちゃん、だよな?」
「そうだけど・・・。」




男の子は、う〜〜ん、あ〜〜〜、等と言葉になってないない言葉を呟いていた。
その間に何度か膨らむ、ガム。
病院内でガムは良かったのか悪かったのか知らないけど。
ガムで風船を作ったことの無い私は、ただ上手だなと思って眺めていた。
というか、本当にこの人は何なのだろう。












何が何だか分からない私と、悩み続けている男の子。
端から見たらどんな風に見えるのだろうと思ったけど、幸い私たち以外に周りに人影は無かった。
ふと幸村君を見ると・・・ものすごく可笑しそうに笑っていた。何故。



「幸村君?」
「あぁ、ゴメンゴメン。ブン太が、余りにも挙動不審になっちゃって・・・。」



赤髪の子が「ぶんた」君と言うらしい。
その、ぶんた君は「別にきょどってないだろぃ!?」と言い、相変わらず幸村君はクスクスと笑っている。
この状態から、私はどうしたら良いんだろう・・・。












さん、ちょっっとお願いがあるんだけど。」
「え、何?」
「ブン太、あぁ、この子の相手してやってくれる?」
「相手?」
「そう。 さんに会いに来たんだって。」



そうなんだー・・・ってそのままの雰囲気で流しそうになったけど。
え?今会いに来たって言ったの?しかも、私に?




「えぇっ!?」
「迷惑だった?」
「そ、そういうわけじゃないけど・・・。お客さんなんて初めてだから、驚いちゃって。」



本当に。
私の病室に来るのは、両親か看護婦さん、病院の先生以外にいなかったから。
幸村君と話してるのも、1階のロビーでだし。







「そう。それじゃあ、よろしくね。」



幸村君はぶんた君の背中を押して、にこやかに去っていった。
うん。その表情は今までに見たことないくらい、にこやかだったよ。
そして爽やかだったよ。
















「えっと、ここで話するのも何だし、ロビー行く?」
「そだな。」

























「えっと、改めまして です。」
「俺は丸井ブン太。」
「ぶんたって、どう書くの?」
「ブンがカタカナで、太は・・・普通の。太郎とかの太。」
「へー。珍しいね。」
「だろぃ?」
「じゃあブンちゃんって呼んで良い?」
「良いぜぃ。じゃあ って呼んで良いか?」
「うん!よろしくね、ブンちゃん。」
「シクヨロ☆」



ブンちゃんは、何て言うか可愛い男の子だった。
男の子に可愛いって言ったら失礼かもしれないけど。
和みやすい感じ。
それに幸村君と並んでたからかな。
ブンちゃんが小さく見えるの。
私の方が小さいんだけどね。












「へぇ。じゃあブンちゃんはテニス強いんだ。」
「もち☆俺の天才的妙技で余裕だぜぃ。」
「自分で天才って言う子は天才じゃないんだよ!」
「あ、言ったな。今度見せてやるよ。俺の天才的妙技。」
「楽しみにしてるー。」







テニスの話をしているブンちゃんは、凄く生き生きしていた。
こんな風に、一生懸命になれるものが私にもあったら良いのに。
ブンちゃんが行っている立海大附属中学校も、楽しそうだった。











ってどこ中?」
「私は・・・どこだろう・・・。」
「え・・・?」
「私、小4の頃から入院してるんだ。」



そう言うと、ブンちゃんは悲しそうな顔をした。
頭をちょっと下げて、悪ぃ・・・、と小さく呟く。
そんなブンちゃんの頭を、私はクシャクシャと撫でた。
髪の毛は凄くフ・lt;script language="JavaScript"> tワしていた。





「何か俺、ガキ扱いされてねぇ?」
「ブンちゃんはそう言うこと気にしなくて良いの!」
「けど・・・。」
「だったら私は自称立海大中生って事で!」



ね?っと言うと、ブンちゃんは笑った。
じゃあついでに同じクラスな!なんて言っている。
ブンちゃんは立海大の行事とか、部活の話をいっぱいしてくれた。






楽しくて、時間なんてあっという間に過ぎていった。
幸村君以外の男の子と話したのなんて久しぶり。
ブンちゃんが会いに来てくれて本当に嬉しかったんだ。












「じゃあまた来るぜぃ!」
「あ、見送り・・・・。」
「良いって。 疲れただろぃ?」
「うーん。ちょっと。」
「無理しなくて良いって。じゃあまたな!」



そう言って、私とブンちゃんは別れた。
手にはブンちゃんからもらったグリーンアップル味のガム。




それを口の中に入れる。
甘い味が口の中いっぱい広がった。



「美味しい・・・。」



ブンちゃんの真似をして、膨らまそうとした。











でも、ガムはちっとも膨らんでくれなかった。













2006.9.21