もう1度来てしまった。
柳生父が勤めている病院。
幸村君が入院している病院。
そして、昨日の子が入院している病院。















○●出会いは唐突に














部活は・・・まぁ所謂サボり。
こっそり抜け出したんじゃないんだぜぃ?
んな事してもすぐバレるし。
真田の裏拳飛んでくるし(アレどうにかなんないかな)
ちゃんと正式に部活休みをとってきた。
理由は体調不良って事で。
真田に自己管理も出来んとはたるんどる!!って言われたけどさ。
まぁ何とか切り抜けてきた訳だ。






そして今、俺は病院の玄関にいる。
迷わずに来られた俺はスゴイ。
けど問題があるんだよなぁ・・・・。








何て言って入ろうか。









連続で幸村君の見舞いってのもなぁ。
別に良いだろうけど。
でも絶対幸村君、怪しがるというか・・・誰かが連絡してきた時に言っちゃうかもだし。
口止めしてもらうって手もあるけど、それはそれで怪しまれるだろぃ。













「う〜〜〜〜〜ん・・・・・。」
「ブン太、何やってるの?」
「うぉいっ!?ゆ、幸村君・・・・。」




事もあろうに、俺の背後から幸村君が・・・。
どうする、俺。どう言い訳すべきだ!?




「連続でお見舞い?何か忘れ物でもした?」
「あぁ・・そう!ガム部屋に無かった!?」
「ガム?さぁ・・・どうだろう。見に来る?」
「行く行く!!」





と、こんな感じで俺は病院へと入っていった。
そして幸村君の病室へ。
確か・・・あの部屋も2階だったはず。
そう思った俺は、幸村君の部屋へ行くまでの部屋を1つ1つ見ていった。
って言ってもジロジロ見てた訳じゃないんだぜぃ?
それは流石に怪しいだろぃ。
まぁだから、軽くチラッと・・・。





けどその部屋は見つからなかった。






少し、いやかなり落胆しつつ思い切って幸村君に聞いてみた。



「なぁ幸村君。」
「何?」
「この階に俺らと同い年ぐらいの女の子いねぇ?」
「女の子?あぁ、いるよ。何でブン太が知ってるの?」
「あぁ、うん。昨日の帰りにチラッと見えたから気になったっていうかさ。」
「そう。俺が入院するよりもずっと昔からいるみたいだよ。」
「ふーん・・・。」



ずっと入院か。だったらあんなに白い肌でも分かるよなぁ。
なんて、自己完結しながらプクッと風船ガムを膨らます。









「ブン太、もしかしてその子に会いに来た?」




パンッ




幸村君の言葉で、風船が割れちまった。




「そ、そんな訳ないだろぃ!?」
「ふふ。この廊下の逆突き当たりだよ。」



読まれた!?もしかして俺バレバレだったりする!?
何か・・・格好悪ぃ。
幸村君は相変わらずニコニコしてるし。
何て言うか・・・新しいおもちゃ見つけたみたいな顔。
観念するしか無いですか。




「確かにちょっと・・・そういう気もあったりするけどさ・・・。」
「やっぱり。なら会いに行ってくれば?」
「簡単に言うなよ。初対面でいきなり会いに行くのも変だろぃ。」




ただ何となく来てみただけだし。(それだけのために部活を休んだ俺もスゴイけど)
名前も知らない、向こうは俺の顔すら知らないで、どうやって会いに行くつもりだったんだ?
俺の考え無し。マジでどうするつもりだったんだろ。








なかなか行くと言わない俺に幸村君が痺れを切らした。



「俺とあの子は面識があるから、俺の連れって事で紹介すれば良いだろ。」
「それも何か変じゃねぇ?」
「俺の案に何か問題でも?」
「イエ、滅相も御座いません。」









結局、幸村君に言ってもらうことにした。
俺たちは病室から出て、逆の突き当たりへ向かう。




















突き当たりの病室。個室。
名前のプレートには『   』の文字。



・・ ・・。」



口の中で小さく呟く。
幸村君はコンコンとドアをノックした。









シーン・・・・・








「留守か?」
「散歩に出かけてるのかもね。どうする?」
「どうするって・・・あぁ、また今度にする。」
「そう。分かった。」



ちょっと呆気ないけど。
でもいきなりじゃやっぱ驚くしな。
前もって幸村君に言ってもらった方が良いだろぃ。









俺たちが幸村君の部屋へ戻ろうとした時だった。







「何か用?」
「いえ・・・っあ!あぁ!!」



俺の叫び声に、相手は怪訝そうに眉をひそめる。
そりゃそうだろぃ。
いきなり叫ばれたらな。
けど叫ばずにはいられなかったんだって。










会うつもりで来て会わないで帰るつもりだったのに会っちまった。
ちゃんがいたんだからさ。












2006.9.19