離ればなれになった恋人が出会えるのは、1年に1度。











天の川の距離













「あっつぅーー・・・。」
ジリジリと照りつける太陽。
夏真っ盛りと思いきや1週間雨が続く梅雨だったり。
いつの間にか梅雨が終わってましたねーって、毎年天気予報士が言ってる気がする。
どっちにしても暑いのは変わらない。
特に京都の夏は半端じゃない。





「こんな暑いのに外におるもんやないし、さっさと家帰ろー。」
自転車があるのは唯一の救い。
歩いて帰ってたら家に着く頃には溶けたアイスになってるかもしれない。
少しでも風に当たりたくて、自転車を漕ぐスピードを速める。





ふと、公園に小さな子供達が集まっているのが見えた。
何故か少し気になって近づくと、そこのには大きな笹。
「何しとるん?」
「あ、 ねぇちゃんや!」
「今日なぁ、七夕やろ?やからお願い事するねん!」
みんな色とりどりの短冊を手に取り、嬉しそうに願い事を書いていた。
−−−そっか、今日七夕やってんな・・・・
年を重ねるにつれそういう伝統行事にまで気が回らなくなる。そして忘れていくのだろう。
ふと、ある幼馴染みの顔を思い出した。
小6の時にふらっとどっかへ行ってしまった、幼馴染み。







−−−アイツ、誕生日明日やったっけ?
小さい頃はよく一緒に遊んでいた。
そして、何を思ったか私はいつも7日に「おめでとう」を言っていた。
『今日誕生やないよ?』
『知っとる。明日やろ?』
『せやったらなんで今日おめでとう言うん?』
『8日は恋人が離ればなれになってまう日やってお母さん言うとったもん。その日におめでとうってなんか寂しいやん。』
『ふーん・・。』
なんて、そんな会話をした記憶がある。
七夕の次の日。恋人達が出会えて、そして分かれてしまう日。
「微妙な日やなぁ・・・。」
自転車を影のあるところに置き、付けてある短冊を見ていく。
「同じ名前いっぱいやん。みんな欲張りやで。」
「えぇねん!いっぱい書いたら1個ぐらい叶えてくれるかもしれへんし!」
「・・・七夕はサンタさんとちゃうよ。」
走りが早くなりますように、はまだ可愛い方。
ラジコンもらえますように、とかお好み焼きぎょーさん食べれますようにって・・・。
何か違う(笑)







ねぇちゃんも何か書く?」
「ん?そーやなぁ。書こかな。」
私は1枚短冊をもらって、願い事を書く。
そしてちびっ子達の手の届かないところにくくりつけた。
「あー!そんな高い所にくくったら見えへんやん!何書いたん?」
「秘密ー♪」
「ボクの見たくせにズルイわー!」
「あははっ。ほなねー。」
ズルイ攻撃を笑ってかわしながらちびっ子達と別れる。
影から出た所はやっぱり暑かった。



















公園を出て、3つ目の角を左に曲がって坂を上った所にある私の家。
夏に上ったら汗ビッショリになるこの坂を一気に上る。
家の前には・・・・金髪の男がいた。







「外人さん?」
「何で金髪で外人やねん!」
「シ、シゲ・・・!?」
「久しぶりやなぁ。 のボケは相変わらずや。」
クックと笑うシゲの髪の毛が太陽の光でキラキラ光る。
未だに目の前にシゲがいることが信じられない。
「っえぇーー!?何で黒髪やなくなったん!?」
「イメチェンやって。似合とるやろ?」
「・・・・派手。」
「何やぁ。カッコエェの1つぐらい言うてくれたってえぇやないの。」
ビックリした。暑さで幻覚見えたのかと思った。
黒髪が金髪になってるし、それに・・・。
「今までどこ行っとたん!」
「色々とな。今は東京やけど。」
「トウキョウって・・・、何でまた。」
「・・・・自由に、なりたかったんや。」
そう、言ったシゲはいつも通りに笑っていた。
いつもどこか無理して笑ってる気がする・・・シゲの笑顔。




「心配・・・・したんやで。急におらへんなるし・・・、連絡もないし。」
「寂しかったん?」
「なっ、そんな事・・・・っ!!」
「俺は寂しかったで。・・・・ のボケやないとツッコミしがいがないし。」
「なんやねんそれ!!」
「冗談やって。・・・半分本気やけどな。」
「・・・シゲのアホーーー!!」
なんだかんだ言いつつも、このやりとりが好きだった。
私も自然と笑えてくるし、シゲも・・・笑ってくれてた。














「シゲ。」
「うん?」
「誕生日おめでとう。」
「・・・おおきに。」















次の日。
シゲはいなくなっていた。
『8日は恋人が離ればなれになる日やから』
来年も7日に帰って来ぃや。












短冊にかけた願い事『シゲが帰ってきますように』
















****あとがき****
悲恋ですか?・・・NOです。
だってちゃんと会えたもん。
会話以外が標準語で、変かなぁと思ったんですが。
こういうのも良いですよねー(自己完結)

2006.7.12