たまにはこんなクリスマスも良いかもしれない。
何も無かった12月24日。心と体、ちょっと温まる。
ココア
12月24日。
世間じゃクリスマスムード全開。
道行く人はカップル以外いないんじゃないと思うくらい、カップルカップルカップル・・・。
そんな中を一人で歩いてる私はさぞかし浮いてる事だろう。
「寒・・・・。」
はき出した息は白く、ふわりと消えていった。
マフラーを口元まで引き寄せる。
手袋を持ってくれば良かったと後悔しながら、それでも家へ引き返すことなく街を歩いていく。
特に行き先はないけれど。
なんとなく、クリスマス気分を味わおうと思って。
・・・・・思ったのは良いけど、歩くのが面倒になってきて道中公園のベンチで一休み。
飽きっぽいってヤダね。
キラキラと輝くイルミネーションや、これ以上ないってくらい幸せそうなカップル達を眺める。
彼氏とクリスマスを過ごすっていうのも憧れだけど、そういうシチュエーションを楽しみたいっていうだけで、
特別彼氏が欲しいとかはなかったりする。
そんな微妙な感じ。
「
?」
そんな事をぼぉっと考えているとき、声をかけられて振り向くと見知った顔。
「おや、三上さん家の亮君。こんな所でどうしたよ。」
「部活のクリスマス会買い出しの帰り。」
「3年レギュラーも買い出しなんてするんだ?」
「じゃんけんに負けたんだよ。つーかお前こそこんな所で何してんの?」
「気の向くままクリスマス気分を味わおうと思って街に出てきたは良いけど飽きて休憩中って感じ。」
「飽きたのかよ・・・。」
そう言うと、三上は私の横に座った。
「こんな所で油売ってて良いのかい?察するにそれ食べ物でしょ?」
「メインは渋沢が作るし。これはオマケ。」
「あぁ、森の母ね。アレは凄いよね。」
そう。武蔵森のキャプテン様は凄い。
そんじょそこらの料理人よりも腕が良い。
この前渋沢のお弁当をたかった時に食べた卵焼きは絶品だったね。
「三上ー。暇ー。」
「寮戻れよ。どうせすることないんだろ?」
「失礼な。いやないけど。でも戻った所で暇なのさ。」
「彼氏いねぇの痛っ」
「それは言っちゃいけない言葉すなわち禁句だよ三上君。」
「だからってグーで殴んな・・・。」
別に彼氏がいないことなんてどうでも良かったりするんだけれども。
とりあえず殴ってみた。
痛かった。
私の手が。
ふと、自動販売機が目に止まる。
冷たいジュースなんてとてもじゃないが飲む気しないけど、暖かいココアが飲みたい気分。
「三上ー。寒いー。」
「コレやる。」
「お、ココアじゃないか。しかも私が今まさに飲みたかったヤツ。これぞ以心伝心?
もしかして読心術なるものを心得てる?ヤダよ腹黒人間なんて渋沢で十分。」
「その台詞そっくりそのままアイツの前で言ってやれよ。」
「私はまだ死にたくないです。200歳まで生きるんだから。」
「いや無理だろ。」
「それにしても何で三上がココア持ってんの?甘い物嫌いじゃなかったっけ?」
「・・・・コーヒーと間違えたんだよ。」
「うわ、バーカバーカ。」
「ココア返せ。」
「もう飲んじゃいましたー。」
「そうかよ、」
あれ、何で三上の顔こんなに近いんだろって、頭の中でぼんやり思った。
口に柔らかい感触。
「うわ、甘・・・・。」
「ココアだもん当たり前じゃないか。」
「ずいぶんノーマルな反応だな。」
「三上サイテー。私のふぁーすときすを勝手に奪ったー。」
「超棒読み。つーかお前元彼とキスしたことあったんじゃねぇの?」
「それはマイフレンズが勝手に流した根も葉もない噂です。しかも彼氏いない歴イコール年齢。」
「マジ?」
「うんマジ。というわけで責任取ってよね。」
よっと、勢いつけてベンチから立ち上がる。
「どうすりゃ良い?」
「そうだねー。私も渋沢の料理食べたいな。」
「相変わらず食い気ばっか。夢がねぇな夢が。」
「良いじゃないか。ほら行くよ。自転車後ろ乗っけて。」
「はいはい。」
彼氏とクリスマスを過ごすっていうのも憧れだけど、そういうシチュエーションを楽しみたいっていうだけで、
特別彼氏が欲しいとかはなかったりする。
だけど、この男と過ごすのも良いかもしれない。
たまにはこんなクリスマスも良いかもしれない。
何もなかった12月24日。心と体、ちょっと暖まる。
マイペースヒロイン。
最初予定してたのはこんな話じゃなかったはずなのに・・・。
無理矢理甘々に繋げました。
む、難しかった。甘々苦手ー・・・。
2006.12.24